43.生クリームに物申す!
2006年 08月 13日
西側に面した我が家のキッチンは、午後になると燃えるような西日が差し込んで、温度計が見る見る上昇。連日、32度を超えて、夜になってもなかなか温度が下がりません。そんな中、小型扇風機で気休めの風を送ってはみるものの、パン生地を捏ねている間は、風により生地の表面が乾燥してしまうため、スイッチを止めなければならず、午後のお教室はまさに暑さとの戦い。まさにパン生地が発酵する適温の中で、皆さんと一緒に汗だくになりながら、生地を捏ねるという思い出深い夏となりました(笑)。
さてこんな暑い日に、生クリームを泡立てて、ショートケーキを作ろうなんて、それはもうできたぁ~もんじゃぁ~ありません。せっかく冷やして固めた生クリームも、気温が高いお部屋で作業をすれば、ケーキの側面にぬっていくうちに、トロトロと溶けていき、上手に形が作れないのです。しかもドイツの生クリームはそれでなくてもとっても、とっ~ても使いづらいのですから!
写真左はフレッシュな生クリームで、右は常温で長期保存可のもの
そう。こちらに住んでいる方で、ケーキのデコレーション用に生クリームを泡立たてた際、なかなかかたくならないことに苛立った経験のある方はきっと多いはず…。何を隠そう、私も一番最初に生クリームを泡立てたとき、まだか、まだかと泡立て器を回し続けて、クリームがかたくなりかけていたにもかかわらず、ある一瞬を境にしてモソモソと崩れ始めて、あっという間に分離してしまった、という体験を一度ならずも二度、三度と繰り返しました(泣)。
日本でケーキのデコレーションに使う生クリームは、いわゆるホイップクリームと呼ばれているもので、乳脂肪分は42%。こちらの生クリームは28%~30%とかなり控えめです。「EXTRAHARD(特別固い)」と表示されているものでさえ33%とあまり変わりばえはしません。実はこの乳脂肪分こそが、かたく泡立つための大きなポイント。生クリームを泡立て器で攪拌していくと、少しずつトロミがついて次第にかたく泡立ってくるのは、生クリームに含まれている乳脂肪が働いて、気泡を固定し、独特のコシを作ってくれるからなんです。つまり乳脂肪が高ければそれだけ安定したコシのあるクリームに仕上がるというワケ。
そこで乳脂肪分の少ないドイツでは、Sahnestandmittelという白い粉が販売されています。これを200ccの生クリームに1袋加えて泡立てると、ちょっとはマシに泡立ちます。ハイ。ちょっとだけ(笑)。だって日本のように角が立つと言うにはかなり程遠いのですから…。それでもこれを加えることによって、少なくとも時間の経過とともにクリームが水分と分離しやすい状態からは免れることができるようです。
そしてSahnestandmittelとお砂糖を加えるタイミングは、生クリームが八分立てに泡だった頃。これはドイツ人のマイスターから教わったのですが、確かに後から加えると、見た目にもかたくなっていくのを感じることができます。
さらに私はこの他に、脂肪分42%のダブルクリームを加えます。例えば生クリームに少量のクリームチーズやマスカルポーネなどを加えただけでも、ずいぶんとコシに違いがでるんですね。ただクリームの味を損なわないためには、ダブルクリームが一番! そしてデコレーションをする直前まで泡立てたクリームを冷蔵庫で冷やしたらもう安心。デコレーションをすることがだいぶ苦痛ではなくなります(笑)。
ドイツの生クリームでお困りの方、ぜひお試しくださいませ。
おいしいケーキを召し上がれ♪